HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第23章 放課後の唄声 《白布 賢二郎》
切なくなるような、胸が苦しくなる唄声。聞いているだけで心が締め付けられる、でも聴いていたい、そんな音を彼女が紡ぎ出している。
俺のなかで、何かが落ちる音がした。
これはきっと、俺の恋心なんだろう。
この瞬間、俺は彼女の唄声だけじゃなく、彼女自身に恋をした。
「‥どうだったかな、白布くん」
今まで彼女を包んでいた張り詰めた空気は解き放たれ、柔らかな雰囲気のさんが現れた。
「すごく、とっても良かった。聞いてるだけで、胸が苦しくなって、張り裂けそうだったです。‥恋の歌なんですね」
「そう、世の中には甘い恋だけじゃなくて、辛い恋もある。辛い恋の中の気持ちや感覚を歌に込められているんだ‥。私は恋、したことないから。作曲者に想いを馳せて少しでも表現できるようにしているんだよ‥」
さんの演奏は、恋そのものだった。
‥その想いを、俺に向けてほしい。