HQ‼︎ Language of love《短編集》R18
第23章 放課後の唄声 《白布 賢二郎》
もっと話がしたいのに、何を言ったらいいのか分からない。何か言葉にしなくては、用事を終えた今此処には居られなくなってしまう‥。
「‥俺に歌、聞かせて下さい。先輩」
精一杯の勇気を振り絞り、願いを口にした。
「先輩なんていいよ、3年の。でいいよ。」
笑った顔は、俺の心臓の鼓動を益々速めた。
「‥さん、俺は白布賢二郎です、バレー部の一年です。前から貴女のことが‥気になってたんです。あ!その、違くて、いや、違くないんですけど‥貴女の唄声が、いつも廊下で聞こえてて、好きなんです」
「ありがとう、白布くん。じゃあ、聞いてくれる?」
「はい‥」
さんはピアノに向きなおして、一瞬のうちに真剣な目をして鍵盤に指を落とした。
美しく、優しい、けれど力強い伴奏。
すうっ、っと彼女の深い呼吸の後、まるで彼女が教室中の空気を支配しているかのように張り詰めた。
そして待ち望んだ唄声が、目の前で生れた。