第9章 wings
「面白いだと…?」
「はい。前から席官の方たちは個性の強い人ばかりだなと思ってたんですが、そう来るかっ!って感じでなかなか趣深いですよ。
それに、すごく愛嬌のある顔じゃないですか。」
「あ、愛、嬌…。本気で言っているのか…?」
「はい。隠す必要ないと思いますよ。」
「…」
シン…と私達を静寂が包む。
狛村が何か考え込むように顔を伏せてから何秒ぐらい経ったか。
「本当にこのままで良いと思うのか?」
「受け入れられないことを怖がっちゃダメですよ。
何事も勇気を出してやってみることです!」
狛村は私を見て口角を上げた。
「隊長に向かって堂々とものを言えるとは、大した度胸の持ち主だ。」
言葉こそ目上の人だと思わせるものだが、友達と冗談を言い合うような話し方だったので、私も冗談めかして返した。
「お褒めの言葉ありがとうございます。」
「褒めてない。確か、雲雀と言ったか。」
「はい。」
「突然で驚いたが、いいことを聞いた。」
「いいことだなんて、そんなぁ~…素晴らしいの間違いですよ。」
狛村は最後まで冗談を通す私に大きな口を開けて笑った。
そして私を暫く見つめた後、私に背中を向けて歩いていく。
大きく翻った羽織が私の鼻先を掠めて風と共に木々の隙間へと消えていった。