第9章 wings
とうとう大広間は静けさが勝り、沢山の人が帰ってしまったので私も座布団から立ち上がり、寝転んでいる人を跨いで出口へ向かう。
「雲雀、今日はお疲れだったな。ゆっくり休めよ。」
「冬獅郎…ありがとう。すごく楽しかったよ。」
「これからもっと頑張るんだぞ。」
「阿近さんも私に負けないように頑張って下さいね。」
「お前ホントに言うようになったな。」
「阿近さんの影響ですね。」
じゃ、と手を振って暗い瀞霊廷の道を歩く。
(色んな人と一気に仲良くなった気分だな…そうだ、久々にあの森の中行こ。)
私も少しお酒を飲んで体がポカポカしていて、
何故か無性に艶斬と修行がしたくなってきた所だった。
瞬歩であの流魂街の森の中に降り立つ。
獣道のように開いた道を進んでいくと、いつもの場所に着いた。
上を見上げると綺麗な星空が広がっている。
月は青く大きく光っており、ここで艶斬と修行するんだと考えると幻想的にも思えてきた。
「静かな夜だなぁ…さっきまでワイワイしてるところにいたからかな。」
今日のパーティを思い出して笑が零れる。
ハッとして、こんなこと思い出してないで早く始解しないと、と艶斬を鞘から抜いて構える。
「燐光煌めけ艶斬!」
暫くして今夜も艶斬との修行を終え、帰ろうと踵を返した時、微かだが何者かの霊圧を感じ取り、私はその霊圧がする方へ歩き出した。
(こんな時間に誰が…)
なるべく足音を消して森の中の木をすり抜けていくと、崖の上に立つ大きな人影が月を見上げているのが木々の隙間から見えた。