第9章 wings
「修兵さん!」
「よぉ。決まったぜ。」
「え?何がですか…ていうか何ですかそのヤな笑みは…。」
「この前言ってだろ?飲み会だよ飲み会!」
「飲み会…資料を渡した時の話ですか?」
記憶を辿ってみると確かにそんな事を言っていた気がするが、
どうも何かが引っかかる。
(……いやいや飲み会じゃなくて私の入隊祝いでしょ!)
「皆で集まって楽しもうぜ。」
いつの間にか私の入隊祝いという名の慰労会になってしまっているではないか。
「もう…いや、はい。楽しみですね。」
「もう飲みたいだけじゃん」と喉元まで出かかった言葉をかろうじで呑み込んだ。
「だな。にしてもお前、結構有名人なんだな。」
そう言えば、と何か思い出したように檜佐木が口を開く。
「有名人?私がですか?」
「そうそう。一緒に飲まねぇか?って色んなやつに聞いてたんだけどよ、瀬越雲雀のお祝いだって言った瞬間マジか!って顔して乗ってきたんだ。」
「そ、そんなに私のために頑張って…って、何人ぐらい来ることになってるんですか?」
「んー、結構いるな…そうだな、わからん。」
「え、ええ!?」
この人そんな適当だっけ!?と疑いたくなるが、本人は何事も無かったかのようにあっけらかんとしている。
それは浮かれているとも取れそうな感じで。
「まさか修兵さん、好きな人誘えたんですか?」
「はっ!?い、いや、そんなことは無ぇ…と…」
(これは、図星の反応!)
「ふふふ…。誰ですか!さあ!言いましょう!」
「何でだよ!んな奴いねぇって!」