第9章 wings
「突然孫娘なんて言い出すからびっくりしましたよ。」
「変な意味はなかったのだが…。」
二人きりになった隊首室で総隊長とさっきの話をしていた。
こんなに近寄り難い雰囲気を放つ年寄りの、おちゃめな一面が引き起こした、冗談と思えない冗談で周りの人が戸惑うという事態。
「それはさておき…本当に良いんですか?おじいちゃんが責任を負うなんて、普通はありえないですよ。」
「言ったじゃろう。孫娘の面倒を見てやるのが務め。
しかしこれからはもっと気をつけるんじゃぞ。」
「はい。」
どうも私に責任を取らせたくないらしく、私は総隊長のご好意に甘えることにした。
私が一番隊を去った後、総隊長が「そろそろ潮時か…」と呟いたことはまだ私は知らない。
「あーあ、もう変な事件ばっかり。虚の大量出現だー、街の破壊だー…いや、私のせいか。にしても、私だけなのかな…。」
随分と前から気になっていたこと。
それは、私が放つ鬼道だけがなぜか爆発的な威力を持っていること。
私はほーんのちょっと力を込めただけなのに、どうしてあんなにもドカーンと自分でもびっくりしてしまう程のものになってしまうのか。
(もう王族ってことしか出てこない…。)
どれだけ思考を巡らせても結局行き着くのは同じで、
王族の特別な霊力がそうさせているのはもう間違いない。
(家柄のお陰…響きが良くない!)
「雲雀!」
「はい!?」
完全に別世界に飛んでいた私を誰かが呼び戻す。
横を向くと、ニッと笑った檜佐木が企みでもあるように私の肩に手を乗せた。