第9章 wings
「やっちゃった…」
「やったな…」
ぽっかりと空洞ができた街を呆然と眺める二人。
給料から引かれるんだっけ?これってもうクビ?とゴチャゴチャなことが飛び交う頭の中。
もう何も言えずにいると、阿散井が「と、とにかく戻ろうぜ…」と私に告げて尸魂界への扉を開けた。
「派手にやりおったの…。」
「霊圧制御はどうしたんだヨ…。」
涅が技術開発局から持ってきた今日の私達の映像を、一番隊隊首室でモニターに映し、私と阿散井は状況説明に追われている。
「…ということなんですが…。」
「中級大虚が突然多く出現したのも気になるが、破壊した現世の建物の修復が先じゃ。」
「いくらぐらいかかるんですか…?」
「見た感じだとかなり必要じゃが…儂にまかせておれ。
四十六室にも儂から言っておく。」
「え、でも…!」
「気にするでない。孫娘の面倒を見てやるのも務めじゃ。」
「…ん?」
「…へ?」
「…は?」
私と阿散井と涅は連続して声を漏らした。
私は今の言葉の意味を理解することができるが、何も知らない二人は総隊長に孫娘?雲雀が?訳が分からん、と総隊長に訝しい視線を向ける。
(おじいちゃん…そんな堂々と紛らわしいこと言わなくても…)
「いや、総隊長のご冗談ですよ…ね…?」
「…そうじゃ。」
私の問いかけに素直に答えてくれたおかげで阿散井も涅も普通の顔に戻った。
なんだかまだよくわからなさそうな目をしているが、そこは放っておく。
「では、解散。」