第9章 wings
その言葉に私の頬が緩んだ。
「そ、そんな、本当ですか?」
「嘘だと思うか?」
「思いません!」
阿散井がブフッと吹き出す。
「お前、今すげぇこと言ったぞ!?」
「あ!…いや、今のは無視して…。」
じわじわと恥ずかしさがやってきて、お願いだから忘れて!と心の中で叫ぶも阿散井は笑いが堪えられないのか、私の顔をチラチラ見てはブワッと笑う。
「もう!そんなに笑わないでください!」
「クククっ、わ、悪ぃ悪ぃ…あー、すっげー笑った。」
「笑いすぎです!へこみますよ…」
「お前がへこむ所なんて想像できね…」
その時私は自分の血が騒ぐのを感じた。
(虚の霊圧だ、しかもたくさん…)
同じく阿散井も霊圧を察したようで、お互い目を合わせ頷きあった。これまで任務中に現れた虚はどれも最下級大虚で一体だけの場合だけだったが、今回は複数の霊圧が同時に現れた。
また妙な胸騒ぎを覚えて、私達は急いでそのポイントに向かった。
「あれは…中級大虚だ!雲雀、気をつけろ!」
走りながら中級大虚の姿を発見した阿散井が私に注意を呼びかける。
「はい!恋次さんもお気をつけて!」
(鬼道ばっかりなのもあれだし、これは艶斬の出番かな!)
ほぼ同時に私と阿散井は斬魄刀を抜き、それぞれ別の虚に向かって瞬歩で距離を縮める。隣から阿散井が解号を唱えた声が聞こえて、すぐに阿散井の霊圧が跳ね上がった。
(霊圧を制御されててもあれだけ上げれるなんて流石…。)
この一週間共に任務をしてきてつくづく阿散井は凄いと思った。
すぐ近くで阿散井が虚を切り倒す音が聞こえて、私もようやく別の事を考えるのをやめて、斬魄刀を開放した。