第9章 wings
私はド忘れしてしまっていた。
(…そうだ!流魂街は死んだ人が連れてこられる場所だった!
私は流魂街生まれのフリをしてるから、一応死ぬまで現世で生きていたことになってる。だから流魂街生まれは死んだ霊ということを霊術院で教わった時に自分が何者なのかわかってないとダメなんだ…。)
つまり私は霊であり、周りの人も皆霊。
随分前に教えてもらったことなので、ついスポーンと頭から抜け落ちてしまっていたようだ。
今の会話では私の出生が謎めいてしまう。
私が貴族の生まれでもなく、流魂街の人でもないとなると、私の存在がある程度絞り込まれてしまうことを恐れて咄嗟に嘘をついた。
「いやー、私ってよく冗談を言ってしまうんですよね!」
「変な冗談だな。俺達は霊なのに何言ってんだ?って思ったぜ。」
「ですよね…はは…。」
(危ない…これは危なかった…!)
何とか状況を乗り切り、ホッとして体の力が抜けそうになった。
「そんじゃ、任務をするとしようぜ。」
「は、はい!」
そして私たちは、初日から多くの霊を見つけては魂を尸魂界に送る作業を続けた。その途中には虚の出現もあったりして、二人で協力しながら討伐に向かったのだった。
任務の最終日、いつもと同じように町を二人で歩く。
「今日が最後の日だな。」
「すごく日が経つのが早かったですね。恋次さんが強くてほとんど頼りっぱなしでしたけど…。」
私もこの一週間、除霊もしたし虚の討伐にも力を注いだ。
けれど阿散井は私が女だからとあまり前線には立たせてくれなくて、阿散井は斬魄刀で、私は鬼道で援護という形をとっていた。
「初めての奴に丸投げするなんでてできねぇよ。」
「私も力になれたらいいんですが…。」
「お前は十分頼りになるぜ。マジでこの任務初めてなのかって疑いたくなる程な。」