第9章 wings
(すごい奴じゃなくて面白い奴…いや、事実だ…。)
「ああ。お前みたいに明るいのがペアで良かったよ。
で、俺達が任されてるのは現世を彷徨う霊を尸魂界に送ってやることだ。」
阿散井が地面へと降下して行ったのを私も追いかける。
少し遅れをとって私も地面に足をつけ、先に歩き出した阿散井の後について歩く。
「それにここは重霊地だからな。虚の出現率も高いんだよ。」
「そんなことって珍しいですよね?」
思い出すのは一番隊に入る前に起こったあの事件。
(でもあれとは関係なさそう。)
もしかしたら誰かが発した霊圧に大量の虚がおびき寄せられたのかも。そんな事を考えていると頭上を青い標識が通り過ぎた。
(空座町…この町の名前かな?)
その標識に書かれていた文字はきっとここの名前だろうと思った。
「確かに珍しいと言えば珍しいな。まずそんな事は有り得ねぇし。
だから俺達死神がこうやって現世の様子をチェックしてんだ。」
「そうだったんですね…あ、虚が出るって事は、戦うんですよね。」
「もちろん激しい戦闘になるぜ。何にせよ、霊圧も限定解除しなきゃ全部出せねぇし、建物壊したら給料から引かれるし…。」
「ええ、そんなに!?」
「俺も初めて現世に来た時は思いっきり戦闘だったな。」
「…私も頑張らないと…。」
(艶斬と修行しといて良かったぁー…!でも下手して足手纏いになったりしないかな…?)
まだどんな感じになるのか分からない私は色々な想像をして変な不安に駆られる。
それを隠すようにキョロキョロと周りを見回して、何も考えないよう気を紛らわした。
「お、早速居たぜ。」
阿散井の頭越しに見える公園に、少年が佇んでいるのが見えた。
「あれが霊ですか…。」
「お前、流魂街出身じゃねぇのか?」
「流魂街…出身です。」