第9章 wings
そして迎えた現世任務の日。
昨日は仕事終わりにまたあの森の中で艶斬と練習をし、始解状態の扱いをみっちりと修行した。
穿界門の前でペアの人物を待つ。
(副隊長さんだからね。きっと良いリードをしてくれる。)
どんな人かまだ知らないためドキドキが止まらない。
(あ、誰かこっちに来てる。結構強い霊圧…。)
霊圧を感じ取った方角を向くと遠くにいる小さな人影が私の方へ向かってきている。
徐々に全体像がはっきりと見えてきて、私はギョッとした。
(赤髪だぁ!地毛かな?綺麗…!しかも刺青とかオシャレ!)
阿散井は私の目の前で足を止め、私をまっすぐ見つめる。
「六番隊副隊長の阿散井恋次だ。よろしくな。」
パンチの強い見た目からは想像がつかない話し方で更に驚く。
「い、一番隊の、四席です…。あ、瀬越雲雀です!」
「お前緊張してんのか?手のひらに人って書いて飲み込むと落ち着くらしいぜ?」
「お、落ち着いてます!ほら!」
阿散井が謎の調子の私にクスっと笑いを漏らして私の肩をポンポンと叩く。
「とにかく時間だし、行こうぜ。」
「はい!」
開いた穿界門の光に包まれて、しばらく歩くと視界が晴れ、私は初めての現世の空に降り立っていた。
尸魂界の建物とは違う建物が模型のように建ち並ぶのを上空から見下ろして、「わぁ~!」と感嘆の声が無意識に出る。
(これが人間の住む世界なんだ!)
豆のように小さく見える人達があちこちにいて、来ている服も尸魂界には無いものばかりで目を奪われる。
「お前、霊術院の時に現世に来てねぇのか?」
「そうなんです。お恥ずかしい話、あまり成績が良くなくて…。」
「一番隊だからすげぇ奴だと思ってたんだが、お前、面白いやつだな。」
「お、面白い…!?私がですか?」