第9章 wings
「っ!び、ビックリした~…。神出鬼没にも程があるよ!」
『お褒めの言葉ありがとうございます。』
「褒めてない!で、何で出てきたの?」
『こんな夜遅くに女の子を一人で歩かせるわけにはいかないでしょ?』
「あ、ありがとう。」
『ほら行くよ。』
スッと伸びてきた艶斬の手が私の手を包み込む。
(なんか、照れる…!)
艶斬があまりにも自然体で、もしかしたらからかわれてるんじゃないかって疑いたくなる。
(いやいや、艶斬は恋人じゃないし!きっと根っからのレディーファーストなだけ!)
少しの照れも見せず前を向く艶斬の横顔を盗み見なかがらおずおずと手を握り返した。
結界も消え、さっきまで私がいた場所は何事もなかったかのように穏やかになった。
艶斬は家までずっと私と手を繋いで、役目を果たした後は「じゃ。」と言ってパッと居なくなる。
本当にどこまでも気分屋の私のようだ。
(ありがとね。)
心の中で艶斬に呟いて家のドアをガチャリと開けた…。
陽の光の眩しさで眠りから目が覚める。
「…今日はルキアさんとお買い物…。」
別れ際に待ち合わせ場所と時間は十三番隊前11時と約束しておいていた。
「楽しむぞー!」
私は今日、初めて誰かと買い物に出掛けるというワクワク感で、身支度もいつも以上にキッチリした。
「こんな時まで死覇装っていうのもあれだけど…他に持ってないんだよね…。」
あれもこれも買わないと、と考えながら私は待ち合わせ場所に急いだ。