第8章 dramatically
小さい方の赤火砲は瞬歩の術を応用して水面の近くまで飛ばして、大きい方の赤火砲はそのまま私の手からそれぞれ放った。
(大丈夫、バレてない!)
二つの鬼道は並行に飛んで艶斬へ向かっていく。
私の思惑通り、小さくした方は私の手から放たれた赤火砲の水面に映ったものと勘違いしてくれているようで。
…そして、ついにその時が来た。
艶斬が刀を構えたのを合図に下を飛んでいた赤火砲を真上に向かうよう進路を変える。
パァン!
刀で鬼道を二つに割られて弾ける音がした刹那、もう一つの赤火砲が艶斬の足下から艶斬を襲った。
ドオォォオン!
今度はちゃんと命中した音が辺り一帯に響き渡った。
水面がゆらゆらと波を立て、その威力を証明する。
「…うわ、艶斬大丈夫かな…凄い事になったけど…。」
黒い煙がもくもくと広がってしまって艶斬の姿が確認できず、
一気に不安が押し寄せた。
「艶斬!どこー!お願い返事してぇー!」
大声で名前を叫んでみたものの、全く返事がない。
(ど、どうしよう!本当にやばいやつかも…!)
そうこうしている内に視界が黒い煙で遮られて行き場を失ってしまい、頭の中が真っ白になった私は呆然と立ち尽くした。
「…へ?」
その時、誰かが私を背中から抱きしめてくれた感覚がして、
気付けば煙の外に連れ出されていた。
『やっぱり君は凄いね。完全降伏しかできないよ。』
耳元を掠める声のくすぐったさに首を傾げて、お腹に回された見た目よりも逞しい腕を解こうと手を重ねた。
「え、艶斬!?何で…え!?」
『何でって…これは君が僕を屈服させるための戦いなんだから僕は死なないよ。』
「あ、じゃ良かった…じゃなくて早く離してぇ~!」
『嫌だ。』
「えぇ!?」
『はは…耳が赤くなってる。可愛い。』
「っーーー!へ、変態っ!」
『何とでも言ったらいいよ。さ、このまま質問の回答といこうか。』