第7章 excitement
完全に獲物を捕える獣の目をした更木には、もうやめろと言っても無駄だという事は本能で理解出来た。
(こうなったら溜まったイライラ八つ当たりしてやる!)
「太刀が見え見えですよ!」
左斜め下から右上へ、残像が見えるほど素早く空気を斬った更木の無防備になった右脇腹へ蹴りを入れる。
一瞬傾いた巨体だったが、それも一瞬、すぐに立ち直った。
しかし、更木は木刀を持った手を下ろし、私を見るだけでそれ以上何もしてこなくなった。
よく見ると草鹿が更木の羽織の裾を掴んでいる。
「…せーせー殺しちゃダメ!」
(こっ、殺す!?)
「……わったよ。次戦うことになったら、さっきよりもっと楽しめそうだしな。」
「いやいやいや!次あっても私逃げますから…!」
草鹿のおかげで収まった謎の戦いにため息を漏らした。
同時にプッツンと集中力が切れて、横で誰かが騒いでいることに気付く。
「離せぇぇ!」
「ダメだ!雲雀にかすり傷でもついたらどうするんだ!」
何故か暴れる斑目を綾瀬川が羽交い締めしている光景に、
さっきの更木と草鹿のデジャヴを感じる。
(…よし。逃げるぞ。)
綾瀬川が斑目を抑えているのを横目に私はさっさと書類を更木に渡した。
「書類どうぞ。」
「めんどくせーな。」
「ということでさようなら!」
素早く一礼して十一番隊の出口へと走る。
「待て!俺と戦えぇぇぇええ!」
狂った斑目の叫び声が後ろから響いて聞こえたが、
私は何も聞こえていないフリをしてそのまま突っ走ったのだった。
(もう二度とここには来ないんだからー!)
結局何のゴタゴタだったのか理解できなかった十一番隊の死神達は、普段の血の気の多さを発揮せず、呆気に取られて呆然としていた…。
そして本当に小さくしか聞こえなかった草鹿と綾瀬川の会話…
「なんで嫉妬してないのー?」
「…あ…」