第7章 excitement
(もぉー!何であんなにドキドキしたの!?)
十番隊を出てもまだ脳裏に焼き付いた日番谷の顔を忘れられない。
(すっごい優しい目をしてて…あんなの初めて見たかも…。)
綺麗な翡翠の瞳の奥に見えた、暖かな炎。
それは決して燃やし尽くすだけの物ではなくて…
仲間への思いやり、正義による純粋な紅だった。
カッコイイ…なんて思うのは初めてのことで、これが何の感情なのか私にはまだ分からなかった。
「失礼しま…ギャァァッ!?」
十一番隊の敷地に入るや否や、顔面めがけて飛んできた木刀を間一髪身を逸らして避けた。ドォンと空気を割るような破壊音がすぐ隣でして、視界が茶色に染まる。
「ゲホッケホッ…何!?」
(私命狙われるようなことしたっけ!?)
ようやく視界が晴れて辺りを見渡せるようになった時、たくさんの人が…そこにいる全員が私を見ていると気付き、思考が曇った。
「…え…な…え…?」
もう何を言えばいいのかわからず、言葉にならない声をみっともなく漏らすばかりの私。
ざっと100人近くは居るであろう男達の視線に晒されて、いつの間にか無意識に1歩、2歩…と後ずさりをしていた。
「悪ぃ悪ぃ!手が滑っちまってよ。」
隣から聞こえてきた声をたどると、スキンヘッドの男が地面に突き刺さった木刀を引っこ抜いて肩に乗せている所だった。
「全く…実に美しくない失敗だね。」
「アア゙?そもそもテメーが避けるからだろ!」