第7章 excitement
「雲雀ちゃんは自分の力に気付かず、僕らは雲雀ちゃんの力に気付いている。」
(私には何か特別なモノがある…?でもそれって、王族出身って事しか浮かばないな。)
心当たりと言うか、ただの事実と言うか。
霊術院を最下位で卒業したにも関わらず虚を一人で滅多打ちにした出来事は、
それ程死神達にとってかなり衝撃的な出来事だったのか。
「私には、他の人には無い事情があって、死神になろうと思ったんです。」
相手の興味を煽るような言い方をしたと後から思ったが、京楽は無言の圧力をかけるのを止め、ニッコリと笑った。
「そうだったの〜。ま、この後も忙しいみたいだし、僕は帰るよ。」
最後の団子一つを頬張って店の出口へスタスタと行ってしまう京楽。
途中でピタリと足を止めて、私にしか聞こえない小さな声で何かを呟いた。
「ーーー。」
「京楽隊長…?」
「あと、僕の事は名前で呼んで欲しいな。じゃ!また今度。」
「え?待っ!」
シュンッとあっという間に瞬歩で私の前から京楽は消えてしまった。
(どうしてあんな事を?)
視界から隊長の姿が消えても耳にははっきりと残っている、謎の言葉。
頭の中で巡る言葉の意味が結局解らないまま、私も仕事へ向かう事にした。
「次はようやく九番隊かぁ。まだまだ道のりは長いわね。」
その時私は、すっかりあの人の存在を忘れていた。