第6章 dream
「藍染隊長、いらっしゃいますか?」
私と雛森は手を繋いだまま隊首室まで来た。
雛森が中に居る藍染を呼ぶと優しい声で返事を返される。
「雛森君か。入ってくれて結構だよ。」
「はい!」
藍染の声を聞いて何だか嬉しそうな雛森。
隊首室の扉を開ける前に、雛森は私にこっそり耳打ちをした。
「私の憧れの隊長なの…!」
少し照れながら扉を押す雛森の目は、女の子の特別なものが混ざっている気がして、胸がキュンとなった。
(まさか…私に無かった青春!)
雛森に続いて部屋に入り、私は初めて藍染と向かい合う。
「失礼します。一番隊の書類を届けに来ました。」
「ああ君は…瀬越君だね。ご苦労。」
(私って案外覚えられてるのね。)
嬉しくて頬の筋肉が緩みそうだった。
ようやく私の世界が広がったみたいで…。
「雛森君、この溜まった資料を処分してくれるかな?」
藍染が自身の机の上にある紙の山を指して、雛森に目配せする。
「ぅ…わかりました。」
雛森は言われた通り積まれた資料を持って部屋を出た。
静かになった隊首室で、藍染は私から受け取った書類を机に静かに置いた。
そして、私を見つめる。
何か意味を含んだ視線が私から逸れない。
「確か、斬魄刀が無いから死神にはなれないって…言ってたんだよね?」
「言いました…。」
「何か勘違いしていないかい?君は浅打を持っているだろ?」
「持っていますけど、何も起こらないんです。」