第5章 stand
「瀬越…なのか?」
「私?私は瀬越だよ。」
私は思った。
お母さんと顔立ちがよく似ているから、
本人かと勘違いしているんだと。
ただ、髪の毛と瞳の色が違うから戸惑っているんだと。
「瀬越雲雀って言うの。よろしくね。」
そこでやっと別人だと気付いたのか、
固まっていた日番谷の表情が柔らかくなった。
「…そうか。で、お前がさっきの霊圧の持ち主か?」
「多分、そうだと思う。」
「日番谷、隣に居るのが例の者か。」
「ああ。」
私の元に現れたのは頭に牽星箝を付けていて、
容姿の整った綺麗な顔をした男性。
「総隊長がお呼びだ。」
それだけ言って彼はさっさと消えてしまった。
「あの、私何か悪い事しちゃったかな…?」
「安心しろ。誰もお前を捕まえようなんて思ってねぇよ。」
その言葉を聞いてほっとした私だけど、
もっと別の問題があった。
「総隊長って、どこに居るの?」
「お前なぁ・・・。」
「えへへ、私あんまり詳しくないの。」
「仕方ねぇ、俺について来い。」
前へと歩き出した日番谷の隣まで小走りで急いで行き、
背丈が全然違うのに存在感のある日番谷を見た。
「…ん?何か用か?」
「なんか頼りになるなーって思って。」
「なっ……。」
私が笑ったのを見て顔を赤らめる日番谷。
恥ずかしいのかそっぽを向きながら「別に…。」と小さく呟く。
「そうだ、冬獅郎は私のお母さんに会ったことあるの?」
「俺がまだ流魂街にいた時に、俺に死神になるよう勧めてくれたんだよ。」
「そうだったんだ。私も冬獅郎に会えて嬉しい。」
「っ…俺も……。」
照れ臭そうに小さな声で言った後、
「急ぐぞ」と走り出したのを私も追いかけた。