第24章 precious
「いいじゃねぇか。驚かせてやれよ。」
ニッと笑う阿近に私の戸惑いもなんだか吹っ飛んだ気がした。
それと同時に湧き上がるい悪戯心。
(なんだかこんなに楽しいの久しぶり…!)
ずっと抱えてきた悩みも闇も、晴れたからなのかもしれない。
それともまた別の理由なのか。
「阿近さんってほんとそういうの好きですね。」
「いいだろ?いつも同じ顔してる奴が驚いたら、笑え…」
「ほう。この顔が同じに見えるのかネ。」
「げっ…。」
阿近と話に夢中になっていると、いつの間にか開いた扉の隙間から涅がこちらを見ていた。いかにも面白くなさそうな目をして。
「…マ、マユリさん!」
ちょっとだけ躊躇って、思い切って言ってみると、涅は顔色一つ変えずに私を睨む。
(阿近さん話が違います!)
私も阿近を睨むと、阿近は他人事のように顔を背けて一言。
「…今日はいい天気だな。」
「いやフラグ立てないでもらえます!?」
私が想像した悪運ルートまっしぐらで、もう逃げられないと覚悟した私は涅にゆっくり目を向ける。
「何を怖がっているのだヨ。呼び方など気にはしない主義なのでネ。」
「は、初耳です…な、なら、マユリさんで…良いでしょうか?」
「今良いと言っただろう。」