第24章 precious
「そんで、手伝いに来たのか?」
「はい。気分転換にここに来ると逆にインスパイアされるので。」
「研究熱心なのは相変わらずだな。また新しい発明でもすんのか?」
「今の所無いですね。でも涅隊長が面白そうなのを作ってたら協力します。」
阿近は何か気に食わない様子で顎に手をやる。
「…涅隊長か…やっぱ違和感あるよな…。」
「違和感?」
私が理解出来ずに聞き返すと、阿近は腕を組んでソファに深くもたれかかった。
「いやさ、お前、ずっとマユリさんって呼んでただろ?なんか涅隊長って呼ぶのが変な感じするんだよな。」
「…前と同じ呼び方の方がいいですか?」
昔の私は呼び方にこだわりなんてなく、自分が呼びやすければ好き勝手していた。でも他の人が喜ぶのなら、また呼び方を戻すのもいいかもしれない。
「ま、そっちの方が皆喜ぶぜきっと。なんたってお前随分可愛がられてるからな。」
「わ、私が…!?」
「そうだろ?上の奴らがデレデレするのお前ぐらいだし。」
「デ、デレデレ…。」
あまり信じられないことを自信満々に言われたが、そこまで言うのなら良いかもしれない。
「でもマユリさん怖いんですよね…あの突然向けられた狂気の目線は縮み上がりますよ…。」
私は涅のマッドサイエンティストっぷりを間近で見てきたため、いきなりマユリさん、と呼んでどんな目に遭うか想像してしまった。