第24章 precious
「涅隊長、雲雀です。いらっしゃいますか。」
部屋から涅の霊圧を感じないのはわかっていたが、一応聞いてみる。
コンコン、とノックするも中から返事がない。
(やっぱりいない。どうしようか…。)
廊下を見渡し、私は思いついたままに副局長室へ足を運ぶ。
どうやら阿近は居るらしい。
さっきと同じようにノックをしてから声を出す。
「阿近さん、雲雀です。少しお話があるのですが。」
私が喋っている間に、磨りガラスで阿近がドアまで来ているのが丸分かりだった。それに凄い速さだった。
「本当に雲雀…!」
焦ってドアを開け、目も大きく開いて私の姿をまじまじと眺めた後、人が変わったように腑抜けた笑顔になる。
「こうやって顔合わせるの、久々だな。」
「私もなんだか懐かしいです。阿近さん相変わらず怖い顔してますね。」
「元々がこれなんだから仕方ねぇだろ!…って、お前…案外元気だな…。」
「はい。それで、涅隊長はお出かけですか?」
「あー、確かそんなこと言ってたな。もうそろそろ帰ってくると思うが、待つか?」
「じゃあそうさせてもらいます。」
私は副局長室に入り、阿近と反対側のソファに腰掛けた。