第23章 rise
うさぎのストラップを手に持ったまま四十六室を出ようとした時、出口の近くに誰かが立って居るのが見えた。
10メートル以上離れた場所からでも誰なのかは簡単に分かった。
「夔竜雲雀さん…。」
島谷鶴次だった。
どうやら出掛けて帰ってきた時に偶然会ったらしい。
島谷もこちらに歩いてきて、私達は久々に顔を合わせた。
「お元気そうですね。」
島谷は私の顔色を伺った後、ニコッと笑った。
「はい。あなたには何度も助けられました。ありがとう。」
「そんなぁ〜、僕は大したことしてませんよ。でも、ようやくお互い上から睨まれなくなって良かったです。」
「そうですね…あなたのお父さんにもありがとうと伝えておいてください。私はもう四十六室には来ないと思うので。」
「わかりました。気をつけて帰ってくださいね。」
「ありがとう。」
これで最後。もう四十六室に来ることは無い。
長い間続いた確執も、もう終わったんだ。
終わった…その言葉が砂のように私の心の隙間を埋めていった…。
(私の部屋に電気がついてる…しかも人影が四人。あの子達いつまで起きてるつもりなの。)
私は見上げた零番隊隊舎に呆れて息を吐き出した。
もう日付が変わる時間だというのに、勝手に隊首室に集まって私を待っているのが窓から丸見えだった。