第5章 stand
明らかに黒い霊圧が複数、流魂街から瀞霊廷に向かって来ている。
家から飛び出し、試しに瞬歩で流魂街へ進んでみる。
さすがに霊圧が低いとのろまな亀瞬歩になり、
意味がなくなってしまうので少しだけ霊圧を上げる。
「お!速い速い〜!」
風を切る音がなんとも気持ち良い。
しかしまだ陽が昇り始めたばかりだからなのか、まだ皆寝ているのか、
外に出ているのは私だけだった。
(私だけで大丈夫かな?まぁ、何とかなるか。)
武器になる物は持っておらず、学生時代に習った事だけを頼りに敵陣へと突っ込んで行く。
周りから見ればただの命知らずであった。
(そろそろ着くはずなんだけど…あっ!)
地上から何十メートルか離れた上空から様子を探っていた時、森の中の小さな小屋から出てきた幼い少女の前方に男の最上級大虚と中級大虚が少しずつ近づいていた。
先に少女に気付いた最上級大虚が一瞬で少女の目の前へ移動し襲いかかる。
「きゃあああああああ!」
少女が叫び声を上げたと同時に急降下し、
右腕に霊圧を込めて勢い良く最上級大虚の両腕を斬り落とした。
「うがああぁぁあぁあっ‼︎‼︎誰だ!」
目にも留まらぬ超スピードで右手を水平に振り、首も落とす。
残った約4匹の中級大虚は一匹一匹に霊圧をかけて押し潰し、
あっという間に退治完了。
と思っていた。
なぜか全滅させたはずの虚の霊圧を遠くで感じる。
(まずい瀞霊廷に一体侵入してっ!)
気付いた時には既に入口の所まで迫っているようだった。
早く帰ろうと踵を返した時、私の右手を少女が掴む。
「お姉さん、ありがとう。」
「あっ、いいよいいよ気にしないで。またね!」
少女に別れを言ってまた瞬歩で戻る。
今度は流石に死神達が動き出したのか瀞霊廷が騒がしくなった。
(兕丹坊とかが居るし、そんな簡単に入れる場所じゃないし、
うん。問題ないね。)