第5章 stand
阿近と涅の会談中にお茶を持っていく係をしていた時、
ある話が耳に入ってきた。
「新しい毒を作っているのだか、どうにもうまくいかないくてネ。」
「珍しいっすね。」
思わずお茶を置く手が止まる。
「ん?どうかしたか?」
「温度とか、湿度とかは?材料の配分が違ってたりとか、過程で何か忘れてたりとかは…あっ!」
無意識に喋ってしまっていたのに気がついて咄嗟に口を手で塞ぐ。
二人ともキョトンとした顔で私を見ていた。
「お前、毒について詳しいのかネ?」
「い、いえ、ただそういう感じの、実験みたいなのが好きで…。」
「ほう…なかなか面白いじゃないか。ぜひ研究室に来てもらいたいヨ。」
「迷惑でなければ、お願いします!」
この日から一変、監視役から涅のお気に入りの助手として日々を過ごす事となった。
十二番隊の皆、涅ネム、阿近とも仲良くなり、もう一生このままで良いんじゃないかと思うくらい毎日が楽しかった。
いつの間にかマユリは私の事を名前で呼ぶようになり、私も「マユリさん」と呼ぶようになった。
「雲雀、お前大きくなったな。」
阿近が私の頭をポンポンと叩きながら笑う。
「阿近さんこそ縮んだんじゃないんですか?」
「お前が伸びただけだ。そして俺はどちらかと言うと高い方だ。」
「だったら私も低い方ではないですね。」
「お、言うじゃねーか。」
阿近が私の肩に腕を回して私を引き寄せる。
こうやってじゃれ合うのは毎日の事。
「ちょっと阿近さん臭いですよぉー!」
「んなもん我慢しろっ!」
「ふふふっ。」
時を重ねてすっかり私は大きくなり、人間で言う18歳程の見た目になった。
宴会にも参加し、これ以上ない幸せに浸っていた。
そして、あくる日の朝。
巨大な霊圧を感じて私は飛び起きた。