第21章 please
四十六室に来た彩李の話に六人の裁判官が耳を傾ける。
彩李を囲むようにして膝をつき、改まった態度で相槌を打っていた。
「何があろうと瀬越雲雀を有罪にすること。証拠品はあたしが取り締まります。あたしの言う通りにすれば…あなた達に相応の御褒美を与えるわ。」
「承知いたしました彰束様。」
彩李が裁判官達の前から去った後、四十六室中で私が事件を起こしたと伝えられた。
彩李は証拠品が揃う倉庫の、あの部屋の台の上に証拠捏造の記録を置いた。
(どうしてそれを…私に気付かせるため?それとも隠すため?)
私が頭を悩ませている間に私は暗黒の世界に連れ込まれ、沢山の声を聞いた。
それは彩李の心の声。この暗黒の世界は彩李の心だった。
どうしてあたしは生まれてきたの。
何もできない。役に立たない。生きている価値もない。
どうしてあたしは雲雀のように周りから誉められないの。
どれだけやっても報われない。才能の欠片もない。
どうしたら自分を認められるの。
そもそも認めるって何。いくつになってもゴミに変わりはないのに。あたしが雲雀を超えられる訳がないじゃない。
…そうよ。あたしの前を歩く奴がいけないのよ。
あたしが味わった苦しみを味わえばいいのよ。
馬鹿な周りの奴らのせいであたしは惨めな目に遭った。
だからあたしが周りを陥れてやるわ…。