第21章 please
「お前なんてこの世に生まれるべきじゃなかった…この悪魔め…。」
鋭い眼光で彩李を睨みつけ、彩李の父がフラフラと部屋を出て行く。
(彩李…こんなに苦しんでたなんて…。)
父が出て行った扉をじっと見つめて動かない彩李。
「何で…誰も認めてくれないの…。」
その言葉に胸が締め付けられて、私は思った。
きっと自分を探している間に、本当の自分が居なくなってしまったのではないのだろうかと。
その時、廊下の奥が騒がしくなった。
「お止め下さい彰束様!」
「黙れ!もう彰束は終わったんだ!」
侍女達の叫び声と共に、大きな爆発音が屋敷を揺らした。
慌てて彩李が部屋を飛び出したのを私も追いかける。
50m以上離れた距離を曲がりながら駆けていくと、大きな一室から炎が上がっていた。
「お父様の部屋…まさか!」
…爆発音は彩李の父が自害した瞬間だった。
炎は燃え広がる前に沢山の人によって消されたが、ただの火ではなかったために、彩李の父は骨すらも残らず焼けて亡くなった。
焼けた跡となった部屋の前で彩李が崩れ落ちる。
「こんなはずじゃ…あたしっ…!」
愛されたかった相手を、自分が殺してしまった。
その事実がのしかかり、彩李は完全に発狂した。
そして記憶の旅も終盤に…。