第21章 please
「…!やっぱりこの本は彩李が…。」
本のタイトルは「霊子を人工的に宿らせる」で、私が図書館で見つけたものと同じだった。
「夔竜を殺せば彰束に権力が…お父様もあたしを認めてくれる…。」
抑揚のない声でポツポツと呟く彩李に深い悲しみを覚えた。
周りの人に振り向いて欲しい。
そんな切実で純粋な思いが逸れた道へと彩李を追い込んだのだ。
誰にも愛されていないと感じる寂しさはどれ程のものなのか。
そして場面は虚圏に。
恐らく虚圏で一番強いと思われる最上級大虚を従わせる彩李の姿が。
「明日よ。わかってるわよね。」
また場面が切り替わり、空高くから瀞霊廷を見下ろす彩李が手を挙げて何かを指示する。すると空に亀裂ができ、そこから虚が何体も出てきた。
これは私が慶達に初めて出会った時の、虚の襲撃事件だろう。
「さぁて…お手並み拝見ね…。」
彩李は黒い笑顔で過去の私が流魂街へ向かうのを見つめていた。
(そうか…やっぱり黒幕がいたのね…。)
そして、とうとうあの日の記憶を見る時が来た。
映像の彩李は、眼下に広がる私の家を見ている。
「夔竜の使用人は80人…雲雀の父も母も皆殺しにするには十分ね。まだ完成してはないけど、殺傷能力の高さは申し分ないわ。」
(そうか!彩李が私と一緒に家で遊んでいた頃の使用人は80人、だけどその後に一人増えたから彩李は知らないんだ。)