第20章 memorial
一瞬だけ、彩李が笑ったように見えた。
幻覚か実際に笑ったのかは今となっては分からないが、彩李の霊圧がまた上がり、動きが更に俊敏になる。
…どうやら本気でぶつかりに来たようだ。
私も対抗するため集中力を極限まで高める。
彩李が扇子を持った左手を高く上げた時…私は右手の艶斬を巨大化させ、彩李の左脇腹に斬りかかった。
「…甘いわね。」
私の意識がその瞬間に向けられているのを利用され、私は首から背中にかけてを斬撃によって大きく斬られてしまった。
鮮血が噴き出して赤黒い死覇装を再び濃く染める。
「っ…!」
(こうなったら…。)
私は後ろに下がって彩李からまた距離を取り、手に霊圧を込めた。
「第三段階…解放!」
両手の刺青が今までとは違い、真っ白な光を放った。
その瞬間、雲雀の霊圧を誰も感じ取ることができなくなった。
最後の扉を解き放ち、膜のように白い光を身体に纏った私は夔竜の力を操る王となったのだ。
体を覆う光は霊力が変化したもので、高密度な膜に包まれたことによって外の世界と完全に隔離された存在となる。霊圧は漏れ出すことなく、完全に私の中で循環し続けるのだ。
…絶対の存在となった今、世界が変わる。