第20章 memorial
そう。艶斬は私が取り込みたいものを取り込む能力ではなかったのだ。私をそう思い込ませ、気付かないようにさせていたのだ。
本人が夔竜の力を解放していなくても、魂の半分を受け渡すことで、その力と同等の力を、斬魄刀を手に持った時に使えるようになる。
艶斬が私の斬魄刀となった時から、私の魂の半分は艶斬のものになっていたのだ。艶斬は純粋に私の願いを夔竜の力で叶えていただけだった。
『君に返すよ。』
「…私が受け取ったら、艶斬は消えちゃうの?」
『いいや。僕は夔竜の力を持たないただの斬魄刀になるだけだ。それにしても僕が隠していたとはいえ、君は力に溺れることは無かった。それが君の素晴らしい所だよ。』
「艶斬の演技が上手かっただけだよ…私は…。」
(私は…溺れてたかもしれないもん…。)
そうして、艶斬の精神世界で私は残りの魂を返してもらい、もう一度現実世界で目を覚ました。
狂気のオーラに染まった彩李の扇子を持つ手が震える。
「零番隊に命じます。今から私が結界を解くから、新たな結界を張りなさい。」
結界の中で私が生きていたことに喜んで、涙を流す零番隊の四人に向かって言うと、四人とも笑顔で大きく頷いた。そしてせっせと新たな結界を張っていく。
「来て艶斬!」
死神達を包んでいた艶斬の結界が消え、地面に突き刺さっていた艶斬が私に一直線に飛んで来る。
それを手を伸ばしてキャッチし、私は艶斬を構えた。