第20章 memorial
『雲雀、それで良いのかい?』
「…!?」
暗闇をただ彷徨っていた私の世界に突如として一筋の光が差した。
あまりの眩しさにキュッと目を瞑る。
艶斬と初めて会った時のように、その光はどんどん広がって私の世界を照らした。
「……水だ……艶斬の精神世界…?」
膝立ちしている私の足元には青い水面が広がっていた。
ゆっくり顔を上げると、永遠と続く碧い空を背景にして、艶斬が立っていた。
いつもの優しい顔では無く、強い意志を持った顔。
だけど、心まで射抜かれそうなその瞳はなぜか哀しそうだった。
『僕は君の斬魄刀で本当に良かった。純粋な優しさを持った君が好きだった。』
「艶斬…?どうして…。」
私との距離を少しずつ詰める艶斬を見ていられなくて、顔を伏せた。
「もう…私は……。」
『君は、仲間を失ったのは自分のせいだって言ってたね。その理由は、どうしてかは言えるのかい?』
「私が…皆の余生を奪った。私は皆の死を無駄にしただけだった…。」
『君が悲しいのは、身の回りの人が死んだからじゃ無いだろう?」
「へ……?」
『自分を信じずに、悲しい奴だ、って思う事ほど悲しい事は無い。
君は、守れなかった自分のせいだと言いたいんだろう。なら、君は人が死なないようにする事が、守る事だと言いたいのかい?」
「…。」
艶斬がそっとしゃがみ込み、膝立ちで動けない私を静かに抱きしめた。壊れ物を扱うかのように、優しく私を包む。
(暖かい…。)
優しい温もりに触れた私の瞼は自然と閉じられ、流れた涙が頬を伝う。
『もう一度、戦おう。今度は僕が傍にいるから。』
「うんっ、うん…!」