第20章 memorial
遠くで誰かが叫んだような気がした。
ぼやける視界の中で、何故かファントムの動きが止まり、代わりに彩李が何かを言って扇子を扇ぐ。
(終わった…ごめんね艶斬…最後まで勝手な我が儘ばっかりで、呆れちゃったよね…。)
ヒュンヒュンと空気を裂く音に私はゆっくりと瞼を閉じた。
すぐに訪れた全身を焼くような痛みがあちこちに走り、私の身体は地面に膝をつけたまま、前傾姿勢で槍によって固定された。
身体に突き刺さった槍から大破の霊圧を感じ取った後、私の意識は完全に消えた…。
『終わったね。』
無残な姿で霊圧が消滅した雲雀に向かって艶斬が呟く。
「てっめぇ…!自分の主が死んだってのに何で平気でいられるんだよ!」
激しい怒りで興奮状態の楓我が艶斬に掴みかかった。
「やめてっ!もう怒鳴ってもどうにもならないよ…!」
「…。」
涙を流しながら二人の間に純可が割って入り、落ち着きを取り戻した楓我はゆっくりと周りを見渡した。
隊長達、副隊長達、席官から平隊員までの死神皆が、言葉を発することなく哀しみの表情を浮かべていた。中には耐えきれず涙を流す者もいた。
「さぁて…次はあんた達の番ね。」
雲雀という最大の障害物が消えた今、彩李の標的は結界の中にいる死神だった。恐怖で震える死神達を面白がるように、じわりじわりと近づいていく。
『…。』
艶斬は真っ直ぐ雲雀を見つめ、具現化を解いて死神達の前から姿を消した。