第17章 power
「彰束彩李は生きています。先程の虚の襲撃も彼女の仕業です。」
「ではどうやって裁くつもりだ?」
砕蜂は今まで自分がしてきた事を悔やんでいるのか、眉をひそめていた。
隊長たちが不安を浮かべた顔で、静かに私を見つめる中…
私は最後の手段だ、と意を決した。
「私は…瀬越雲雀です。ですが、それは偽りです。」
どういうことだ、と全員が息をのむ。
「確かに王族を四十六室が裁くのは無理です。しかし、王族が王族を裁くことはできます。」
私の言葉に誰もがあることを悟り、私に釘付けになる。
「…私は、四十一年前、全滅した王族夔竜の長女、即ち当主です。」
予想はできていたのだろうが、そこにいた全員が私の口から飛び出した言葉に驚きで目を見開いた。
まさか、雲雀が王族の出であるなんて…と。
「夔竜の紋章はご存知のはずです。」
私は長い間両手の甲の刺青を隠し続けた結界を解いた。
光の屑となって舞い上がってゆく結界から、徐々に夔竜の歯車の姿が現れ、それを見た護廷の隊長と副隊長が恐ろしさに息を呑んだ。
総隊長と零番隊の四人は驚いたものの、冷静に事を整理しようと息を整える。
「私は両親の勧めで死神になることを決意しました。
しかし、今は母も父も、夔竜に関わる者達も、皆いなくなってしまいました。
何より、心から慕っていた零番隊の仲間を助けることができませんでした。」
ひどく平坦で冷静な声だった。
なのに、雲雀の苦しみの一部に触れたかのように、
隊長たちは自分の胸が痛んだのを感じた。
「…この戦いは私が決着をつけなければなりません。だから、皆さんは私に関わらないでください。」
「…ダメだ。雲雀…お前は四十一年前、酷い怪我を負ったはずだ。衰弱した今のお前がまた戦うことになったら、今度こそ…!」
日番谷は叫ぶように声を上げた。