第17章 power
夔竜は王族の最上階に位置する一族で、霊圧の強さ、量は底知れない。
昔、眠る前に母があるおとぎ話をしてくれたことがあった。
「まだ王様がいない時代の国では、毎日の様に戦が起こっていました。誰もが自分こそが一番だ、と周りの人を斬り殺し、家族や友でさえも容赦はしませんでした。」
「何でお友達を殺しちゃうの?」
「誰も信じられる状況じゃなかったのよ。一人で王様になるためには、仲間がいない方がいいって皆思ってたの。」
「寂しくなかったのかな…?」
「寂しいと思っていることを意識していなかったの。とても悲しいことだけどね…。」
母は私の頭を撫でながら悲しそうに少しの間だけ目を伏せた。
「ところが、ある日戦はパタリとなくなってしまいました。愚かな戦いを好まないある一族が、自分達の力を使って戦いのない世界へと変えてしまったのです。それまで一番強くて勢いのあった者も、戦うという事をすっかり忘れてしまいました。そうして平和な世界ができましたとさ。」
「へぇ〜…どんな力を使ったの?」
「さぁ…私にもよく分からないの。ごめんね?」
「えーっ、そこが一番気になるのにぃーっ!」
「でも、案外身近に答えはあるものよ。探してみたら?」