第16章 average
松本を見ると、両目の目尻から大粒の涙を流して顔は悲しみに歪んでいた。
(…あぁ…また泣かせた…。)
「無理矢理聞き出すことはしないわ…でも、あんたが本当に人に言えない理由があるなら、私は少しでもあんたの肩を楽にしてあげたいの!辛いんでしょ?悲しいなら、他人を頼っても良いのよ…?」
(辛い、悲しい…あれ…私、そんなこと思ってる…?)
不思議な気分だった。マイナスな言葉をかけられると、はっきりと否定できない。むしろ本当にそうだと感じてしまうのは、なぜだろう。
「私は、そう見えますか。」
「…へ?」
「私は、弱い人に見えますか。」
松本は手で涙を拭い、大きく頷いた。
「見えるわよ。」
「…!」
私は言葉を失った。ずっと、自分を弱い存在だなんて思いもしなかったのが、ここに来て他人に弱いと指摘されるなんて、予想だにしなかった。
「雲雀、あんたは、決して強くないわ。でもーー」
「すみません、日番谷隊長いらっしゃいますかー!」
隊首室の扉の向こうから何者かが叫んで、まだ喋っている松本の言葉を遮った。
(この声は…。)