第16章 average
「雲雀…俺は、今でも分かんねぇ。お前が本当に犯人なのか犯人でないのか…俺の取った行動が正しいのか正しくないのか…」
「日番谷隊長はその時も迷っていましたか?」
「…あの時は頭が真っ白で何も考えられなかった、自分の行動を迷う余裕なんてなかった。」
「なら何故今後悔しているのですか。私を見て惨めに思ったんですか。あの時貴方だけが別の行動を取ったとしても、結果は同じなのです。」
日番谷は「違う」と言いかけた口を閉ざし、私から視線を外した。
私も自分に訪れた変化に少し戸惑った。
何故だろうか。胸が痛い。奥からジワリジワリと滲み出てくるような、熱く重い痛みだ。
自分の胸元に手を当てて静かに息をしていると、隣で聞いていた松本が私に話しかける。
「雲雀、それ、どういう事よ?」
「…お教えできません。」
日番谷がどれだけ動いても、結果は同じなのだ。
四十六室の裁判官達によって私は牢獄に入れられる。
絶望を味わうのは、私だけでいい。
「どうしてもダメなの?その理由も教えてくれない?」
「はい。」
「なんで…?私、そんなに力にならない?」
「そんなものはは要りません。私は一人で良い…」
パシンッ!
台詞を言い終わることなく、静かな部屋に乾いた音が響いた。
後から襲ってきた頬の痛みに、胸元にあった手で頬を覆う。
「それ、本当に本心で言ってるの…!?昔のあんたは、周りを頼って頼られる存在だったのを忘れたの!」
「…。」