第16章 average
「つい最近よ!おかしな話でしょ…というか!そうじゃなくてっ、雲雀、あんた戻ってきてたのね…!」
松本が目に涙を浮かべて、私の肩をガシッと掴む。
「ずっと待ってたのよ…雲雀が零番隊に帰ってくるの…!可哀想に、濡れ衣着せられて監獄に入れられるなんて…。」
巨乳に圧迫されて息苦しくなる程強く松本に抱きしめられ、首筋に顔を埋められる。
「松本…この部屋に居るのが俺だけだから良かったが、その台詞を他の所で言うなよ。」
「隊長!悔しくないんですか!?好きな子が辛い思いをしたのに!私悔しくてっ…。」
「おまっどさくさに紛れて…!俺だって悔しくないわけないだろ…。」
日番谷が顔を伏せたのを見て、松本がゆっくりと私から離れた。
(何気に新事実…。)
「隊長…。」
涙の跡が頬に残って、まだ目が潤んでいる松本と、歯を食いしばって何かに耐えるように肩を震わせている日番谷…こういう時は黙っていた方が良いのだろうが、これ以上私の事情に踏み込んでもらっては困る。
「私は辛い思いなど一度もしていません。お二人とも、勘違いなさらないで下さい。」
私は何も辛い思いなどしていない。
まるで自分に言い聞かせているようだった。