第4章 past
「まぁまぁ、ちゃんと行き方があるから安心しなさい。」
「もう何で初めからそう言ってくれないのー!」
「言ったら面白くないだろ?さ、準備しろ。」
「今から行くの?」
「当たり前だろ。」
単純な説明しかされてないのにもう行けだなんて…
この二人に娘が飛び立って行く寂しさは無いのかと思う。
だけど、こっちの方が家から離れやすいかも知れない。
「あと、 雲雀の苗字は夔竜だけど、向こうに行ったら私の旧姓を使って。」
「お母さんの昔の苗字?」
「うん。私の旧姓は瀬越。わかった?」
「わかった!」
「おい雲雀、暇な時のために本でも持ってけ。」
本。
私はその単語に異常な反応を示した。
「くれるの!!??」
「おう。」
なぜなら…
その本と言うのは父が現世で大量に買った論文の本だからだ。
その中でも最も好きなのが現世の学生達が習う理科の内容のもの。
科学、化学、地学、物理学、生物学…それらを初めて読んだ時の衝撃と言ったら…。
何と言えば良いのか
ロマン。夢。希望。未来。
それを好きなだけ持っていけと言われたのではもう制御は効かず、
居ても立ってもいられなくなった私は倉庫へと一目散に走った。
「どれが良いかな、やっぱり色んな種類を集めた方が良いよね」
選抜して最終的に5冊だけになった本を鞄に詰め、必要最低限の物も入れ、
家の門をくぐった。
「行ってきます!」
「「行ってらっしゃい」」
これから起こる事に胸を弾ませながら、前へと進んだ。
これからが私の物語。