第15章 explore
私が殺人犯として四十六室に連れていかれ、裁判を受けている最中の映像が浮かぶ。下卑な笑みを湛えながら、自分達の都合の良いように事実無根の嘘証言を繰り返し、私を陥れるために悪魔に魂を売った裁判官達の顔。私が初めて目の当たりにした穢れた世界。
「…忘れるからよ。」
私は冷静に楓我の目を見据えて言った。
「忘れるって、子供の頃のことを?」
「そう。社会で通用する大人になりなさい。皆が口を揃えて言うこの言葉、楓我も聞いたことあるはずよ。」
「確かに聞いたというより、言われたことの方があります。」
「皆、大人になれば社会を生きるんじゃなくて社会に生きるのよ。」
疑問の色が混じった視線を外さずに、私はまだ続ける。
「幸せの意味が変わるの。自分が生きたいように生きる事を夢見てた子供の時とは違う。効率を求めるようになる。そのためにお利口さんにならなきゃいけない。それを知ってしまってるのよ。だから子どもに大きな期待を持ってしまう。」
「…じゃあ俺は…このままじゃ一生親に勘当されたまま…なんですかね…。」
少々脱線してしまったが、私はようやく結論を述べた。
「いいえ。零番隊の楓我を見てもらいなさい。そしてあなたの道が正しいんだと証明するんです。もし手応えが無くても、本心で話し続ける事が一番の近道であり、未来への一歩です。
それに、あなたのことが嫌いだからとやかく言うのではないんです。愛情が強すぎるが故です。」