第14章 sign
「図書館で本読む時に霊圧ダダ漏れの人が近くにおったら、集中できへんやろ?やからここの建物の中は霊圧を抑える結界が張られてあんねん。」
(確かにここに来てから外の霊圧を感じない…全然気付かなかった…。)
「…そうですか。わざわざ本を取ってくれてありがとうございました。」
「あ、ちょっと待ちや!」
市丸が離れた私の手首を掴んで引き止る。
「何ですか?」
護廷の隊長とはできるだけ絡みたくなくて、私は市丸の手を振りほどこうと腕を上下に揺すり、睨みながら後ろを振り向いた。
しかし、そこには印象深い市丸の凍りついた笑顔はなく、開かれた透き通るような青い瞳が真剣な眼差しで私を捉えていた。
「雲雀ちゃん、ごめんな。」
笑っている時よりも何を考えてるのか解りずらく、私はただ何かに囚われたように市丸の目を1ミリも逸らさずに見ていた。
「ほんまに…こんなに痩せてもうて…。」
私の手首を掴む市丸の手に力が入り、握られた部分がキリキリと痛んだ。市丸の手の熱さが妙に強く感じる。
「…市丸隊長…どういうつもりですか。早く離してください。」
「…せやね。ごめん。痛かったよね?」
解放された手首には市丸の手型が赤く残っていて、まだジンジンと熱を持っていた。