第13章 smile
「六番隊から要請が入りました。」
(相変わらず私に手伝わせるの好きだな…。)
面倒臭いから他の人に頼んでくれ…。
そう思いながらも真っ直ぐ六番隊に向かって歩いた。
雲雀が部屋に来て書類の手伝いを始めてから少し時間が経過し、機械的に作業をする雲雀の様子を朽木はチラチラと盗み見していた。
あの頃は、雲雀の笑顔が好きで何度も呼びつけていた。
今でも初めて見せてくれた笑顔が脳裏に焼き付いている。
また…雲雀の笑顔が見たい。
その思いで今回もここに来てもらったが、雲雀は全く感情の読み取れない顔で黙々と仕事をしている。
もう笑ってはくれないのか。
もう一度笑顔を見せて欲しい。
気がつけば、朽木は両手で雲雀の頬を挟んで自分の方を向かせていた。
「どうかなさいましたか。」
それでも動じずに見つめられ、朽木は何でもないと言って引き下がろうかとした。…いや、もう言ってしまえ。
「兄の笑った顔が見たい。」
すると雲雀は全く感情を表情に湛えることなく、口角だけを吊り上げた。
その悲しすぎる笑顔に胸が押し潰されそうな位痛んで、朽木の中の何かが崩れた。
笑顔だけじゃなかった。
雲雀に会いたい理由はもっと別にあった。
緋真を裏切ってしまう想いだからと、今まで無いことにしてきた。
だが、今、ようやくわかった。
自分が後戻りできない程雲雀を愛していたことに。