第13章 smile
私は右手で握り拳を作り、人差し指を立てて頭の横側に当てた。
話したい相手の顔を思い浮かべる。もちろん、目の前の四人を。
(これが意思疎通の鬼道です。やる時は何も唱えません。)
突然脳にビリビリと電流が走った感覚がして、私の声が直接頭に響くのが不思議なようで、皆が目を大きく開く。
頭を抑えていた指を離すと効果が切れた。
「やり方は簡単です。いいですか…ー」
私が即興で鬼道を教えてからしばらくして…。
皆口も動かず声も出していないのに頭の中で会話が飛び交うまでになった。
(俺が一番早く修得できたな。)
(いいや、俺が最初や。)
(あんたたち二人とも遅かったわよ。)
(僕達の会話隊長に聞かれてるんですよ!)
生憎私は指を頭に当ててはいないのだが、四人とも見事に頭の中で私の顔を思い浮かべてくれたようで、会話が丸聞こえだった。
(…ますます似てるな…。)
この馬鹿っぽい雰囲気。ワイワイしすぎて弛んだ雰囲気。
これこそが私の居場所だった、零番隊…。
嫌なことを思い出してまた無意識に塞ぎ込む。
この温かい場所に居られなくて、私は隊舎から逃げるようにして出た。部屋を出る時皆が何か言っていたみたいだが、何だったのかはよく聴いていないからわからない。
特に意味もなく森から出る道を歩いていると、私を追いかけて地獄蝶がやってきた。