第13章 smile
「阿散井副隊長、そろそろ手を離して頂けますか。」
私の方に両手を置いて固まったままの阿散井に声をかけると、感情を呑み込むように息を詰め、ゆっくりと手を離した。
「…なぁ、聞いたら嫌な気になるかもしんねぇが…あの事件、本当はお前じゃねぇんだよな?」
「私からお伝えできるのは、信じるのはあなた次第だということだけです。」
「雲雀…。皆、ずっとお前の帰りを待ってたんだ。皆、罪悪感に囚われてる…。」
言葉を外に出そうとしているのだろうが、どうしても口の中で篭ってハッキリ言えないらしい。それでも言いたいことは、ちゃんと聞こえているのだが。
「ふざけたこと言ってないでお仕事に戻られたらどうですか?」
歩き出した私の後ろで阿散井は無言で立ち尽くす。
しかし私も運が悪かった。
「あいつ!瀬越雲雀だよ!ほら!」
「うわマジじゃん…。」
「何でいるんだよ…?」
私が今いるのが一番隊の近く。場所が場所ということもあり、早速例の騒動があった時に警備をしていた死神達と対面を果たしてしまった。
「おい!まさか脱獄したんじゃねぇんだろうな。」
「釈放されました。」
「何でまたお前が零番隊の隊長やってんだよ…!」
「私が決めたことではありません。」
あまりの鬱陶しさに無視して通り過ぎようと目線を逸らした時、私の周りに騒ぎを聞きつけた人達がわらわらと集まっていたことに気が付いた。