第13章 smile
窓から射し込む光の眩しさに目を細めて布団から体を起こした。
久々の長時間睡眠で目がパサパサする。
(…スッキリしない。)
疲れが溜まって再び眠りに着こうとする体を叩き起こし、壁に掛けてある隊長羽織を身につけ、外へ出た。
(昨日の奴等が洩らしたのか…。)
散歩中の瀞霊廷内で噂の中心となっていたのは、他の誰でもなく、私だった。
「本当かよ…?」
「ああ。顔は知らねぇが、雲雀って言うらしい。」
「でも、そもそも多数の巨大虚を一発でってあり得るの?」
「隊長とかなら大丈夫だろ。」
「え?その人何処かの隊長さんなの?」
(それ以上は詮索しないで貰えるか。)
どこもかしこも私の話題で持ちきりの瀞霊廷。
段々気分が悪くなってきて「ハァ」と溜め息をつく。
(もう戻ろう。)
隊舎に戻るために元来た道を歩いていると、前方に現れた誰かが棒立ちで固まっていた。
(あれは…。)
「雲雀!?お前、雲雀か!?」
「そうですけど、あまり大声で名前を呼ばないでもらえますか?阿散井副隊長。」
「す、済まねぇ…。つーかその羽織は…。」
「見ての通りですよ。零番隊だか何だか…釈放されたと思えばまたこれですよ。」
そう言って阿散井に憎しみを込めた笑顔を向ける。
当の本人は目を見開いて私の変わりように驚くばかりだった。
「…何があったんだよ…。」
俯いて押し殺す様な声を出す阿散井。
「何もありませんが?私は仮面を剥がしたまでです。」
「は?お前、マジで言ってんのか?」
「嘘をつく理由がありません。」
「っ!そんなわけ無ぇだろ!」
ガッと私の両肩を掴んで眉をひそめる彼は、
今まで見たことが無いくらい苦しそうな顔をしていた。
じわじわ滲んで行く阿散井の瞳はひどく揺れていて。
私はまた溜息をついた。