第12章 star
捕らえられた日にできた心の穴を更に抉られた気分だった。
きっと誰か一人だけでも私を信じてくれていると思っていた。
ささやかな希望でさえ叶わない。
感傷的になっているからだろうか。
やけに復讐心に駆られる。
瀞霊廷の人達とは友達でも何でもなかった。
仲間でも何でもなかった。
私を突き落とした悪人共…。
「おい!止まれ!」
私は一時の感情に身を任せて一番隊へ歩き出した。
死神達は私を引き止めようと斬魄刀を抜いて私の前に立つ。
「あんた達の責任者に話がある。通せ。」
「それはならん!残虐な殺人鬼を総隊長に会わせるなどできる訳ないだろう!」
「私が殺人鬼ですって?何処から聞いたのか知りませんが、あなた達は自分でものを見る眼が廃れているのですか?」
「何っ!?貴様、間違っても自分の立場をわきまえて発言しろ!」
可哀想な奴らだ…。
自分で真実を知ることができず、立場的に上の人の言う事を信じて生きる道しか与えられていない。
何が正しいのかさえ自分で考える事ができないのだ…。
「止まれと言っている!さもなければ斬るぞ!」
「そうすればあんたも裁かれる。」
「残念だったな。俺達は貴様を殺しても良い権利を与えられている。」
私は死神達が構える斬魄刀の切っ先が触れそうな距離で止まった。
「殺人鬼を殺す殺人鬼は正義という訳ですか。他人によって許されている行為だから正しいと思うのはご立派なことです。」
私の冷たい目に狼狽える死神達を無言で制し、一番隊の扉を抜けた。私の後ろにはもう誰も付いてこなくなった。