第12章 star
それから時間が過ぎて、ようやく私はこの腕輪を理解した。
喉を潤すために水を飲もうとすると食道を通る前に吐き出す。
それは食べ物も同じだった。
睡眠もあの痛みに阻まれてできずにいる。
腕輪は生理的欲求を満たさない事で精神を束縛するものだった。
(破壊するにも力がない…。)
怒りと苛立ちで頭の血管がどうにかなりそうだった。
執行猶予を告げられてから三日間、一睡もしていない。
鏡を見ると酷い有様だった。
目の下に濃いクマ、顔全体の血色も悪い。
私は誰も居ない森の隊舎で、今日も憎い朝日が昇るのを放心状態で待っている。
もう早く投獄された方がマシだ。
そう思える程苦しい日が続くのなら、情報を得るだけ得て四十六室に戻ろう…。
私は縺れる足で一番隊の前まで歩いた。
「…おい!瀬越雲雀だな?」
一番隊の入口前には何のためか五人の死神が立っていて、私の姿を見ると呼び止めた。
「…。」
「瀬越雲雀かと聞いている。答えろ。」
「はい。」
「お帰り願えるか。あなたを入れるなとの命令です。」
「なぜですか。」
「今言った通りだ。総隊長のご命令で全ての隊舎前に門番を置き、瀬越雲雀が来たら止めることになっている。」
「…。」
(総隊長が、か…。私の事なんかもう誰も見てないもんね。しょうがないか…。)