第12章 star
私の第二の家でもあった零番隊隊舎に戻るため森の中を足早に歩く。陽射しが葉の縫い目から降り注ぎ、風がそよげば涼しげな音が鳴る静かな森…のはずが隊舎の方角から人の話し声が聴こえる。
不吉な予感がした。
このまま隊舎へ向かってはいけない。
そう思ったのに一つの目的しか持たないように、体が言う事を聞かずどんどん隊舎との距離を詰めていく。
「灯路どこ行ったんだろうな。他の零番隊の人達も見ないし。」
「俺の同期のやつが変なもん見たって言ってたんだけど、いまいち本当か怪しいんだよ。」
「あ、今密かに話題になってるやつだよな?全隊長と隠密機動が集まってたって。」
「それそれ。…あ、零番隊の…。」
隊舎の前で話していた三人の男性の死神が私に気付く。
三人とも気まずさに顔を曇らせて、話しかけることを躊躇う素振りを垣間見せた。
「…ぇ、ぁ…。」
灯路の所在を聞きたいのだろう。口を開けて話そうとするが言葉が喉に詰まって出ないらしい。
私は三人の前で足を止め、ある意味の事実を伝えた。
「灯路はもう零番隊ではありません。」
衝撃的な告白を聞かされた三人は顔を見合わせてただ驚いていた。
「お帰りください。零番隊は解散されました。」
「は、はい…失礼、しました…。」
遠ざかる三つの背中を見ながら、私は自分の弱さを知った。