第11章 crown
四十六室にたどり着こうと必死に街を進んでいたのも束の間、何者かに尾けられている気がしてふと立ち止まった。
(複数いる…どうしよう…。)
きっと相手方も一定の距離を置くようにしているのだろう、
立ち止まった私に近づいてくる気配は感じない。
敵か味方か…もし敵なら圧倒的な力の差で負けてしまう。
どうすることもできない歯痒さに耐え、また足を踏み出した時だった。
「縛道の七十五 五柱鉄貫!」
「きゃっ!?」
何者かの縛道によって私の身体は一瞬にして身動きができなくなり、周りは沢山の人に囲まれてしまった。
…隠密機動だ。
縛道を唱えた砕蜂が建物の屋根から私の前に降り立って、静かに告げた事に言葉を失った。
「王族、そして零番隊隊員を殺害したとして…瀬越雲雀を連行する。」
「…へ…!?」
(私が皆を殺したっていうこと!?なんで、証拠があればそんなデタラメな判断ができるわけない…!)
「今から何処へ行こうとしていた?現場へ行って証拠を隠滅しようとしていたのだろう?」
「ちがっ…!」
「答えろ!何をしようとしていた!?」
私は気付いた。
砕蜂の瞳の奥が揺れている事に。
(戸惑ってるんだ…私が犯人だと信じれない気持ちと自分の義のせいで…。)
「…誰から命令されたんですか?」
「っ!だ、黙れ!裏切り者がそのような口を…」
「四十六室じゃ。」
突然隠密機動の人達が道を空けたと思うと、その間から総隊長をはじめとする隊長達が現れた。
「おじ、総隊長…!皆さんも…。」
どの隊長も砕蜂と同じ目をしている。
市丸と東仙は分からないが、きっと同じ思いを宿しているのだろう。