第11章 crown
雲雀が意識不明で眠っている間、四十六室は大騒ぎだった。
「王族と零番隊隊士が零番隊隊長、瀬越雲雀によって殺された」
それは死体に残った霊圧が雲雀のものであったことから断定された。しかし雲雀に動機なんて無かったはずであり、犯人である雲雀自身も重症を負っている事が不自然であった。
四十六室は極秘に捜査を続けたが、死体の傷痕から検出された雲雀の霊圧以外の証拠は見つからず、死体が霊子化してしまい難航を極めた。そして唯一の有力な証拠として艶斬が没収されたのであった。
色々な意見が飛び交う中、四十六室が出した結論は、
「瀬越雲雀を有罪にする」という事だった。
(…ぅ…痛い…っ…。)
身体を捩ろうとすれば全身に走る激痛に私は重い瞼を開けた。
蛍光灯の眩しさでなかなか全開できなくて、目が慣れるまでじっとしていると徐々に見知らぬ天井を捉えられるようになった。
「ひぅっ、あ゙ァ…っ!」
狂ったように痛む体に鞭を打って上半身を起こす。
思うように首が動かなくて、目だけで辺りを見渡してみると、周りには何もなく、白い部屋の真ん中に私が乗っているベッドがポツンとあるだけだった。
何か考えようとしてもモヤモヤとした霧に邪魔されて、うまく頭が回らない。
(…ここ、どこ…?あれ…何してたんだっけ…。何でこんなに怪我してるの…?)
全身に巻かれた包帯が雲雀の負傷の酷さを物語っていた。「何でだろう…?」永遠と同じフレーズを頭の中で繰り返す。
限りないループの中、ふと姿が見えない艶斬の姿が浮かんだ。
あの美しくも凶暴さを放つ刀身、繊細で綺麗な柄…
白と…青の…。
(!…そうだ私っ!あの青い化け物に皆殺されて私だけ何とか逃げて…。)
思い出すと言葉には表せない悲しみが私の胸を締め付ける。
目の前で大好きな仲間を殺され、何もかも失ってしまったような喪失感に今更襲われた。