第11章 crown
終わった…と一息つくと霊圧が一気に下がって痛みが再び襲い始める。身を焼くような痛みに悶絶しながら壁つたいに艶斬を取り戻し、とにかく私は瀞霊廷に向かおうと必死に足を動かした。
…そこまでしか記憶に残っていない。
ただがむしゃらだった。
血液が大量に流れ、酸素が無く朦朧とする頭ではいつ瀞霊廷に着いたのか、どうやって来たのか。
それさえ分からなかった…。
夕方、自宅に向かう途中、道に大きな血痕が続いているのを見つけた朽木ルキアの背筋が凍った。
「これは一体…!?」
周りには自分しかおらず、自らの目で真相を確かめなければと、おぞましさに警鐘のように高鳴る鼓動が悪い予感を的中させた。
どちらが進んだ方向かなんて何も考えずに血の跡を辿ると、道にぐったりうつ伏せで倒れた人を見つけ、全身から血の気が引いた。
元の色が判断できなくなる程赤黒く変色したものは、隊長羽織。
腰紐にぶら下がった血塗れなうさぎのストラップ。
「雲雀!雲雀っ!」
頭よりも体が先に動いた。
ビチャビチャと足音が立つくらい溢れた血だまりの中心へ急ぎ、首の下に手を回して仰向けにし、顔を確かめた。
「っ…!?」
血塗れでも、力なく瞼が閉じられていても解った。
雲雀だ。間違いない。
何がなんだか混乱していたが、朽木はとにかく助けを呼んで四番隊へ雲雀を運んだ。