第11章 crown
ユラユラと立ち上がり、頭から流れ落ちる血で遮られた視界の中目を凝らすと、半壊した壁の隙間から青い怪物がフラフラと頼りない足取りで出てくる。
怪物に目はない。
なのに私から1ミリも目を逸らさずに見ている気がした。
それも一体だけでなく、ぞろぞろと後に続いて姿を現す…。
(これで全部なら六体…一瞬で片付けなきゃ、今度こそ…!)
今自分が初めて死と隣り合わせであると自覚した。
こんなにも近くに恐怖が迫っているのに、私は自分でないみたいに冷静だった。
一斉に空中へ飛び上がり、私にとどめを刺そうとしている怪物達に向けて叫んだ。
「縛道の六十三、鎖条鎖縛!」
青い怪物は私とほぼ背丈が同じだが、巻きついた鎖が大き過ぎてもう全身が見えなくなった。
六体とも捕まえ終わって次は破道を唱えた。
「破道の九十、黒棺!」
不気味に鎖ごと飲み込んでいくこの黒い破道が私は好きではなかったが、こうして咄嗟に出してしまったのは今の自分の心に一番似ていると思ったからなのか…私にはわからない。
ゆっくり霊子となって消えゆく破道の中には、無様に切り刻まれた怪物達が鎖に力なくぶら下がっている。
そしてドサッと砂埃を巻き上げて鎖も怪物も地面に落ちた。
「……。」